現在の食品表示に関する法律の区分は【図2】のように複雑であり、これらを分かりやすく整理するために現在食品表示に関する規定があるJAS法、食品衛生法の食品表示に関する部分を一元化というところが今回の主な作業になっています。
しかし端的に申し上げるとJAS法は「品質」、食品衛生法は「安全」という法の目的に違いがありますので、重なる部分はありますが、その必要な表示事項が違っております。具体的にはJAS法では品質に影響を与える部分として原材料とか原産地、一方、食品衛生法では添加物とかアレルギー物質を表示することになります。又、健康増進法関連では栄養成分表示が主たるものです。参考までですが、消費者庁が行った大手スーパーマーケットからの買い上げ調査によれば約80%の食品に栄養成分表示がなされていました。現行ではこの表示は任意なのですが、表示について定められたルールがあり、表示を行う際はこのルールが適用されるとされています。これらの表示に関する法律を一元化するために、後程ご説明する検討会を開催しました。その議論の過程では一元化の対象とする法律についての議論もありました。景品表示法や牛トレーサビリティ法なども対象とすべきではないかというご意見もあったのですが議論の末、最終的には2つ(JAS法と食品衛生法)+1つ(健康増進法)であろうという意見集約が行われました。
ここで現行の各法律の内容を簡単に紹介しますとJAS法では条文本体には表示基準を定めなければならない旨が規定されていますが、それを具体化した基準として大きく2つの基準、生鮮食品品質表示基準、加工食品品質基準があり、このそれぞれに個別の品目品質基準が定められています。一方、食品衛生法では主に2つの基準、1つは乳の、もう1つは乳以外のものとなっています。乳の方の表示は乳等省令第7条、乳以外のものは食品衛生法施行規則第21条として運用されてきたものですが、これらは既に消費者庁の内閣府令に移行されています。【図3】このように、JAS法は生鮮食品と加工食品とに分けた体系となっているのですが、食品衛生法はそのような体系にはなっておらず、これらを体系化して一本の基準にしていこうということです。そこに至るまでにはまず用語を統一していかなくてはならず、これが重要な作業となります。
現在実際に機能している基準を議論なして変える事は出来ない訳ですから、『食品表示法』(案)は、先ずは食品衛生法とJAS法の表示に関する部分を統合するという事になります。新しい表示基準はその後に作成されますが、これも基本的には現在の表示基準を維持したまま両法の関連する基準を統合するという方向性になります。但し当然用語を統一し文言整理は行わなければなりません。また一方で従来から変わる部分として栄養成分表示があります。現在の任意表示から新法施行後5年後を目途に義務化を目指すという方向になっております。