前号の定款変更申請(事務所移転)に関して追記しておきたい。
平成六年六月二十九日、協会は、昭和三十六年十二月四日設立以来の定款に定める主たる事務所所在地を東京都豊島区から東京都町田市木曽町二三一一番地に移転する定款変更を厚生大臣に申請した。八月一日付で許可が下り、移転日を同年九月一日として登記を完了した。この年、当時会長会社だった株式会社尚山堂は創立百周年にあたり、町田市に建設していた新工場が完成した。協会はその一角に事務所を置くことになったのである。
さて平成六年から七年は食品関連業界にとっては転換期となる年であった。
牛乳は昭和四十三年七月三十日に、それまでの販売曜日表示から製造年月日表示制度に改められていた。それが、平成六年十二月二十七日の食品衛生法施行規則および乳及び乳製品の成分規格等に関する省令「乳等省令」の一部が改正により、製造年月日表示から期限表示(消費期限、品質保持期限の二種)に移行することになったのである。この改正は平成七年四月一日から施行されるが、平成九年三月三十一日までの二年間は移行期間として製造年月日表示だけでの販売が認められることになった。
この改正は以下の経緯であった。厚生省は、平成四年十二月に【食品の日付表示に関する検討会】を設置し、製造団体、消費者団体等から意見を聞き、平成五年十一月に報告書をまとめた。この報告を踏まえ、翌十二月には食品衛生調査会に「食品の日付表示を期限表示とすることについて」諮問を行った。食品衛生調査会は、食品規格部会及び乳肉水産食品部会の合同部会により審議を行い、平成六年四月十一日、「製造年月日表示から期限表示に移行するのが適当である」とする旨の報告をまとめた。その後、ガット通報を行い平成六年九月十二日に食品衛生調査会常任委員会を開き、食品の日付表示には、製造、加工技術の進歩等を踏まえ、品質保持に係わる情報としては、製造年月日よりも期限そのものの表示(期限表示)をおこなうことが有用であり、食品の劣化速度に応じた「消費期限」と「品質保持期限」という二種類の期限表示を導入することが適当であると答申した。これにより食品衛生法施行規則および乳及び乳製品の成分規格等に関する省令「乳等省令」が改正されたわけである。
期限表示の種類
期限表示は、腐敗、変敗やそれに伴う変化など衛生上の危害の発生を防止する観点から、食品の製造後、飲食に供しても衛生上の問題が生じない期間や品質が保たれる期間が終わる時期を示すものである。 この終期を過ぎた場合、品質が急速に劣化しやすい食品と、数日で腐ったりせず比較的劣化の緩慢な食品とでは、衛生上の危害が発生する可能性に差があるため、これらを明らかにするため、二種類の期限表示が導入された。
消費期限
定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の食品等の劣化に伴う衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期限を示す年月日をいうとした。 品質保持期限 定められた方法により保存した場合において、食品等のすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいうとした。
期限を設定する者
食品の劣化速度は、原材料の衛生状態、製造、加工時の衛生管理状態、保存方法等の諸要素により左右されるので、表示される期限の設定は当該食品等に関する知識や情報を有している者が設定すべきもので、基本的には、製造または加工を行う営業者が行うこととしている。また、輸入食品などについては、基本的には、輸入業者が行うこととした。
期限の設定方法
食品の特性等に応じて微生物試験や理化学試験および官能検査の結果に基づき科学的、合理的に行うこととされている。 なお、品質保持期限の設定は、食品等の製造後、定められた方法により保存した場合において腐敗、変敗、その他の食品等の劣化に伴う衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期間の終期より、十分に余裕を持って行う必要がある。
保存方法の記載
期限表示は、定められた方法により保存することを前提としているので、従前の保存基準が定められている以外の食品等についても、保存の方法を表示することになる。
保存方法の表示は、食品の流通や、家庭等において可能な保存方法等をよく考慮したうえで具体的に適切な保存方法を記載する必要がある。
食品衛生法施行規則および「乳等省令」の改正内容は以上の通りだが、乳業界は検討審議を重ねた結果、全国牛乳協会会長名で当協会会長宛に以下の協力の文書による要請があった。
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平成7年3月16日
(社)全国乳栓容器協会
会長 浅野 勉殿
(社)全国牛乳協会
会長 中山 悠
日付表示制度改正に伴う対応について
時下、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。また、日頃から当協会事業の推進につき格別のご理解を賜り厚くお礼申しあげます。
さて、すでにご承知のとおり、平成6年12月27日食品衛生法に基づく乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)の一部が改正され、牛乳等の日付表示が現行の製造年月日等の表示に代えて品質保持が可能な期限の表示(以下、「期限表示」という。)を行うことに改められ、本年4月1日から施行されることになりました。
当協会といたしましても、新しい日付表示制度への切替えのための諸準備を進めてきたところですが、この度、下記のとおりその対応について取りまとめ、傘下会員に通知したところです。
つきましては、貴職におかれましても特段のご理解を賜りますとともに、貴傘下会員への情報の提供方ご配意を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
記
1 対象
「乳等省令」に規定する牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳及び乳飲料としたこと。
2 期限表示の類型(用語)
「消費期限」及び「品質保持期限」の二種類としたこと。
3 期限表示の設定
「牛乳等の日付表示(期限表示)設定のためのガイドライン」により、製品ごとに、微生物等を指標とする保存試験を実施し、その結果に基づき、期限の類型及び期限を科学的、合理的に設定するとしたこと。 また、期限設定後の適正度の確認保存試験を四半期ごとに実施し、これらの記録は1年間保存することとしたこと。
4 製造年月日等の表示
今回の改正の趣旨を踏まえ、義務付けられた新 たな日図付表示への切り替えが円滑に行われるようその周知につとめることとし、製造年月日等の表示は行わないこと。
5 表示期限の標準
期限表示の設定は、前記3、により行うことと したが、品質保持期限を表示する牛乳等につい て、調査データに基づき次のとおり標準的期限を示すこととした。
対象;品質保持期限を表示する製品
① 常温保存可能品:製造日を含めて60日
② その手の製品:製造日を含めて9日
6 期限表示への切替え
流通市場における混乱を避けるため、標準的切 替え期日を示すこととしたこと。
標準的切替え期日 平成7年11月1日
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これに対し当協会は、平成七年三月二十七日に理事会を開いて、慎重に審議を重ね、乳業界の一員として、要請に沿うように最善の努力をすべきであるとの結論のもと、下記の回答文書をまとめた。
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平成7年4月26日
(社)全国牛乳協会
会長 中山 悠殿
(社)全国乳栓容器協会
理事長 浅野 勉
拝啓 春暖の候、益々ご清栄の段慶賀に存じます。 常日頃より当協会事業にご理解を賜り厚くお礼申しあげます。
さて、平成7年3月16日付「日付表示制度改正に伴う対応について」の貴協会通知を拝受致しました。
当協会として早速全会員に貴意を伝達致し、その対応について種々協議いたしましたところ、出来得る限り標準的切替え期日に向けて努力することに一致致しましたが、下記について貴協会傘下の乳業メーカー各位のご協力がえられなければ物理的に困難な面もあり得るとの結論に達しました。
つきましては、貴協会傘下の乳業メーカー各位に対しまして宜しくご配慮を賜りますよう、くれぐれもよろしくお願い申しあげます。
敬具
記
1. 標準的切替え期日に紙容器・牛乳キャップ等(以下容器等という)を間に合わせるためには新表示への改版及びこれらの製造に要する期日も考慮のうえ当該期日以前、十分な時間的余裕をもってその具体的な改版内容を当協会会員にご提示いただきたいこと。
特に標準的切替え期日前には、旧表示と新表示 の容器等を同時並行して製造することになり、現状の製造能力をはるかに超える増産等が必要になりますことをご賢察下さるようお願いいたします。
2. 前記のようなことから標準的切替え期日の運用については特段のご配慮を賜りますようお願いいたします。
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以上のような(社)全国牛乳協会と当協会の打ち合わせを踏まえ、理事長名を以って、当会会員に「日付表示制度改正に伴う対応について」として通知を行った。
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今回平成6年12月27日、乳等省令の一部が改正され、牛乳等の日付表示が製造年月日から期限表示となり、平成7年4月1日から施行されることになりました。
当協会として、新表示制度への切替えについて関係業界の動向を注視して、適切に対応して行く所存ですが、(社)全国牛乳協会においては、期限表示への標準的切替え期日を本年11月1日と定め、傘下会員への周知徹底を図っているところであります。ついては、この対応につき、理事会において協議しましたところ、当面次の通り対応することに致しましたので、会員各位には十分配慮の上遺憾のなきようよろしくお願い致します。
① 会員各位においては、取引先乳業メーカーと緊密な連絡をとり、具体的改版内容を速やかに入手し、標準的切替え期日に間に合うよう紙容器、牛乳キャップ等の製造等に努められますようにしていただきたい。
② 標準的切替え期日の運用についは、特段の御配慮を願うよう(社)全国牛乳協会に要望しております。
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これらについて当時は全国飲用牛乳公正取引協議会の「公正競争規約」・「同規約施行規則」の変更に伴う表示については、同協議会よりの、「飲用乳の期限表示の対応について」と「乳等省令改正内容」をと、間違いのないよう注意しながら会員に疎漏の無いよう周知徹底をするために大変苦労した二年間であったと記憶している。