1-1. ポジティブリスト制度
食品衛生法第十八条に次の一項が加わりました。
「器具又は容器包装には、成分の食品への溶出又は浸出による公衆衛生に与える影響を考慮して政令で定める材質の原材料であっては、これに含まれる物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を除く。)について、当該原材料を使用して製造される器具若しくは容器包装に含有されることが許容される量又は当該原材料を使用して製造される器具若しくは容器包装から溶出し、若しくは浸出して食品に混和することが許容される量が第一項の規格に定められていないものは、使用してはならない。」(以下省略)
これまでの検討会では食品接触面に使用される合成樹脂を規制するとされていましたが、上記の条文に基づき、現在、食品用器具及び容器包装で使用されている合成樹脂のうち、食品に直接接触する合成樹脂、および食品に接触しない合成樹脂のうち、これに含まれる物質が食品側に移行することが否定できないもの、についてポジティブリストに収載するための調査が厚生労働省食品基準審査課により実施されています。
具体的には、業界団体を通して国内で流通している食品用器具及び容器包装で使用されている合成樹脂について各種規制への適合性を調査しており、当協会においても会員各社にて調査を行っているところです。国内ではポリオレフィン等衛生協議会、塩ビ食品衛生協議会、塩化ビニリデン衛生協議会(三衛協)がそれぞれ自主基準として原材料の衛生基準を作成し、それに基づくポジティブリストおよび確認証明書制度を運用しています。現在三衛協のポジティブリストに収載されている原材料は、今後告示されるポジティブリストに収載される予定です。
ところが、これら協議会への参加は任意であり、現在多くの海外製合成樹脂が器具・容器包装やその原材
料として輸入されているものの、加盟している海外の合成樹脂メーカーはわずかです。
これに対しこれまでの検討会では、従来から国内で食品用器具・容器包装で使用されている既存物質ではこれまで大きな健康被害が確認されていないことを踏まえ、諸外国の規制に適合して安全性が確保されている場合には引き続き使用することを配慮する必要があるということが確認されてきました。現在実施している調査は、米国FDAやEUの規制に適合して現在流通している原材料についてもポジティブリストに収載していくための作業です。
1-2. 製造管理
下記に示す食品衛生法第五十条の三が新設され、厚生労働大臣により①器具・容器包装を製造する営業の施設における、施設内外の衛生保持、人的な衛生管理を含めた全般的な衛生管理基準、および②食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な適正な製造管理のための取り組みに関する基準、が定められます。
第五十条の三
「厚生労働大臣は、器具又は容器包装を製造する営業の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置(以下この条において「公衆衛生上必要な措置」という。)について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。
一 施設の内外の清潔保持その他一般的な衛生管理に関すること。
二 食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な適正に製造を管理するための取組に関すること。
器具又は容器包装を製造する営業者は、前項の規定により定められた基準(第十八条第三項に規定する政令で定める材質以外の材質の原材料のみが使用された器具又は容器包装を製造する営業者にあっては前項第一号に掲げる事項に限る。)に従い、公衆衛生上必要な措置を講じなければならない。」(以下省略)
1-3. 情報伝達
ポジティブリストに適合であることを情報提供することに関する条文として、第五十条の四が新設されました。器具・容器包装の製造、輸入者は、販売先に対して製品で使用されている原材料の規格適合性について説明義務が課せられます。一方、器具・容器包装製造者に対する原材料製造者の説明は努力義務となっています。これは図1に示すように、原材料メーカーは今回のポジティブリスト制度による国のリスク管理の対象外となっているためです。
五十条の四
「第十八条第三項に規定する政令で定める材質の原材料が使用された器具又は容器包装を販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その取り扱う器具又は容器包装の販売の相手方に対し、当該取り扱う器具又は容器包装が次の各号のいずれかに該当する旨を説明しなければならない。
一 第十八条第三項に規定する政令で定める材質の原材料について、同条第一項の規定により定められた規格に適合しているもののみを使用した器具又は容器包装であること。
二 第十八条第三項ただし書に規定する加工がされている器具又は容器包装であること。
器具又は容器包装の原材料であって、第十八条第三項に規定する政令で定める材質のものを販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者は、当該原材料を使用して器具又は容器包装を製造する者から、当該原材料が同条第一項の規定により定められた規格に適合しているものである旨の確認を求められた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、必要な説明をするよう努めなければならない。
図1 厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律の概要」より
なお、情報伝達や前項の製造管理などを含めた「食品用器具及び容器包装の製造等における安全性確保に関する指針(ガイドライン)」が昨年厚生労働省から発表されています。当協会の自主基準もこの指針に準拠するよう昨年末に改訂されました。さらに厚労省から、管理の要点をまとめて公開して欲しいとの要請を受け、協会自主基準を基に、技術統括委員会にて「乳等の容器包装に関する自主管理の要点」を本年3月に作成しました。現在協会ホームページに載せてありますが、今後厚生労働省のホームページにおいても公開される予定です。これは法規制化を前に、業界団体等に属さず具体的な管理方法に関する知識に乏しい小企業にも管理を周知徹底される必要があるために厚労省が取った対策であり、厚労省では軟包装衛生協議会、日本プラスチック食品容器工業会も同様の依頼をしています。