3月12日、乳機器部会のご協力を頂いた会員向けセミナーが、講師に一般社団法人日本乳業協会東倉健人専務理事を迎え乳業会館会議室で開催されました。鈴木会長理事のご挨拶の後、東倉専務理事は「日本乳業協会の取り組み」の標題でその活動と課題について興味深い講演をされました。なお当稿は東倉専務理事のご許可を頂いた当日の録音から事務局福田が抄録として書き起こしたもので、文責は事務局にあることを最初にお断りしておきたいと思います。なおセミナー終了後には日本乳業協会から他の役職員の方々にもご参加頂き、懇親会が開催され日本乳業協会と当協会のコミュニケーションの場となりました。

ご紹介いただきました一般社団法人日本乳業協会の東倉です。本日はこういった機会を頂き誠に有難うございます。本日はお手元に資料も配布して頂いておりますので日本乳業協会のご紹介と今年度やってきたこと、来年度やっていくことといった流れでご説明させて頂きたいと存じます。

まず日本乳業協会の正式名称、会員構成、そして定款に記載された目的はこちらにご案内したとおりですが、目的を使命と言い換えれば「牛乳・乳製品を通して社会に貢献する」ということになると思います。その意味で協会としての使命の一つである情報発信の重要なツールであるホームページは一昨年リニューアルを行っており、特に東日本大震災関連等の情報を発信しておりますし、また一般向けとは別に会員向けの情報発信も行っております。是非一度アクセス頂ければと思います。

日本乳業協会という名称では社団法人として2000年(H12)の設立ですが、この設立は乳業関係3団体の統合により設立されたものです。統合された3団体の内もっとも歴史のある社団法人日本乳製品協会の設立は1917年(T9)年ですので約95年の歴史をもった団体でした。また昨年一般社団法人に移行しております。

会員構成は概略このようになっておりまして正会員である乳業者については個人会員Ⅰ、個人会員Ⅱ、団体会員から構成されており乳業者の100%ではございませんがその殆どをカバーしており、生乳生産量でいえば95%以上と見て頂いてよろしいのではないかと存じます。この他本日ご参加のメンバーの中にもいらっしゃいますが、乳業に関連する企業等の賛助会員の方々がいらっしゃいます。

役員構成では乳業者と非乳業者の割合についてご説明しておきたいと思います。旧民法法人においてはいわゆる業界出身理事の割合が全理事数の半数以下でなくてはならないというルールがございましたので、現在も当該ルールに従った形になっております。但し一般社団法人移行後においては、当該ルールは適用されませんので今後若干の見直しも検討致しております。また備考欄は一般社団法人の代表理事と業務執行理事を示したものです。

事務局の組織ですが、私の他に3名の常務理事がおりましてそれぞれ企画・広報、生産技術、環境を担当し、私は総務を中心に担当させて頂いております。現在協会としては役職員合計22名の体制となっております。広報部に所属しております東京及び関西の消費者相談室は総計6名で消費者からの各種のお問い合わせの対応や、小学校等での食育の観点からの普及啓発活動に携わっております。また会員各社の専門知識をお持ちの方々に専門委員をお願いし、現行では6の常設された専門委員会と5小委員会で活動を行っております。

こちらは当協会の重点課題のリストですがこれは当協会にとっての大きなテーマのリストと言い換えてもよろしいかと存じます。特に東日本大震災からの復興と放射性物質について今まさに目に見える問題として捉えなくてはいけないテーマです。以下課題別に主要なポイントを説明させて頂きますと、1の品質及び安全性の向上による安心安全の確保について言えば、HACCP講習会は有料で実施をしておりますが会員の皆様にご好評を頂いておりますし、官能評価員養成講座による「舌と鼻」の専門家の育成は製造現場における品質の向上にも貢献しています。

牛乳検査精度管理事業とはJミルクさんの事業ですが、これに協力することで、原乳生産側と受け入れ側の検査規格の共通性を高めています。

2-1の牛乳乳製品の普及啓発の柱の一つである牛乳・乳製品の食文化育成・啓発は当協会の一般社団法人としての公益目的事業として位置づけられ、各消費者層の方々に働きかけを行っています。

2-2の需給均衡について目に見えるものとしては平成23年度に発生したバターの需給問題が記憶に新しいところです。

3については昨年10月にTPPについては当協会として反対のコメントを発表させて頂いておりますが言いぶりとしては「本件に関する情報が不足している状況下では賛同できす、慎重な対応を求めたい」ということでございます。

4の環境・リサイクル対策の推進では、2013年と予測されている容器包装リサイクル法の改正と2015年度を目標としている使用済み紙容器の回収率の50%達成への対応が今後共皆様との共通の課題かと存じます。

5の乳業事業の改善と合理化の推進について言えば、いわゆる「事業仕分け」の影響もあるなかで学校給食牛乳用牛乳の円滑な推進を進めていかなくてはならないと判断しております。

最後の+である放射能性物質への対応については大原則として、各自治体で行われている生乳モニタリングで安全性の確保された生乳による牛乳乳製品の安全性は確保されているというものです。ただこの大原則を検証するために学校給食用牛乳を中心に、原子力災害対策本部により指定された17都県を中心に本年2月に新基準値50ベクレルへの適合性を126工場133サンプルで確認し、すべてのサンプルが測定下限値の10ベクレルを下回っていることを検証致しました。これらの情報をホームページ経由等でお伝えし、正しいご理解を頂くべく努めております。

平成23年度の課題と対応については主要な点は東日本大震災関連につきると思います。例えばこれはホームページに載せておりますチャートですが、牛乳ミルクサプライチェーンに対する地震の影響と、その対策の進捗について正しく理解して頂くためのものです。また今回の大震災を通じて明らかになった乳業界の課題を以下のようにとり纏めております。例えば粉ミルク製造工場の首都圏への偏在はいわゆる直下型地震のリスクを勘案すると商品在庫・流通体制の問題を含めて何らかの対処が必要ということです。

平成24年度の課題ということで挙げさせて頂いたものです。放射能物質対応を含めた意味での従来の「守りの広報」から「攻めの広報」への視点の変更を意識し、また国際化進展への対応については、TPPのみならず該当国等と個別で進行しているFTAやEPAも含めて平成24年度は大きな動きが予測されており、業界としての対応が求められると考えております。また今までは手のついていなかった業界としてのCSRについても検討を開始したいと考えております。