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3月16日(月)午後第2回技術セミナーが、乳業会館で開催されました。今回のテーマは「最近の食品衛生の動向」という非常にタイムリーなもので、日本乳業協会の常務理事であり、当協会の理事でもある森田邦雄先生が講演を行いました。

森田先生はまず「食の安全」に関する調査、実施された食品安全モニターを対象とした食品安全委員会の「食の安全に対する意識調査」、日本政策金融公庫の日本の消費者の「安全」と「価格」の意識をハイライトした調査や内閣府大臣官房政府広報室の国産と輸入品に対するや食糧自給率についての消費者意識調査等の各種の調査結果を豊富なエピソードを交えながら説明されました。
また日本の消費者が持っている心理的な「安心」への強い依存と、本来その安心を裏打ちするものでありながら、現在は消費者の意識として、乖離が見られる、科学としての「安全・衛生」について色々な観点から具体的かつ興味深い考察をされました。

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その考察のなかで消費者が安全か危険か判断する感情(心理的な基準)として「自分から進んで行えるか」と「押し付けられているか」や「自分でなんとかできるか」と「自分の意のままにならないか」、そして「知ることができるか」と「知ることができないか」等を挙げられました。この心理的な基準が例えば食中毒と環境汚染物質に対する消費者の認識(パーセプション)にも敷衍されているのではないかと指摘されました。営業者や行政が考える食品に危険を感じる要因と消費者が感じるそれとの「ミスマッチ」がもしあるとすれば、その原因をこのあたりではないかと分析されました。

行政の食の安全へ取り組みは平成15年以降は国際的なコーデックスに代表されるアプローチに則ったもので、食品安全委員会が行うリスク評価と厚生労働省と農林水産省が行うリスク管理によってリスク分析を行うものですが、同時に大事なことはリスクコミュニケーションであると説明され、これによって心理的な「安心」の輪と科学としての「安全・衛生」の輪が一致することができると説明されました。また厚生労働省の食品衛生行政の展開について具体的な説明をされました。

次に食中毒の発生状況の説明に移り、平成11年からの事件数や患者数のデータや平成8年からの主な大規模・広域食中毒事件の代表的なものを取り上げ、その病因物質や症候について、森田先生ご自身が関わられた事件の具体的な経験を含めて興味深い説明がありました。

輸入食品についてはまず、現在日本は食料自給率から考えて輸入食品なしには成り立たない状況にあることを確認された上で、種類別の輸入国の特徴にふれられた後、特に加工食品についていうと中国無しに日本の食生活はありえない状況になっていることをまず認識しなくてはならないのではないかと説明されました。
また中国は少なくとも違反件数を検査数で除した統計上の%ではその検査数の多さの割には、その違反件数は特別なものとは言えないことを指摘されました。また輸入食品の国別の主な食品衛生法の違反内容について詳細な説明をされ、今後は科学的に判断した基準で対応していかないと、輸入食品の不足が日本食糧事情に影響を及ぼす事態が起こり得ると付け加えられました。

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具体的な食品による薬物中毒事案である中国製餃子事件については有機リン中毒の確定患者の数は10名であること、またその汚染濃度から考えると、食品衛生法上の対応だけではなくフードテロリズムに対するフードディフェンスの視点からの対応も必要であるとの指摘をされました。

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この他にもその他の事案に関する興味深いコメントや乳等容器包装の衛生にかかる規制の歴史についても説明を頂きましたがスペースの関係で割愛させて頂きます。

最後に日本の企業も今後はフードディフェンスに関しては「人の管理」について「性善説」から「性悪説」にシフトする必要があるのではないかと指摘されて講演は終了しました。

(本稿は森田先生の了解を頂いて行った録音から事務局福田が書き起こしたもので、文責は福田にあります)


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