食品安全行政の最近の動向~食品衛生法の一部改正など~

平成30年度定時社員総会記念講演は厚生労働省食品基準審査課関野秀人課長をお迎えして食品衛生法の改正や調製液状乳に関する省令改正につき講演頂きました。本稿は関野課長のご許可を頂いた録音から事務局が書き起こしたものですが、文責は事務局にあることを最初にお断りしておきます。(TF)

初めに

 厚生労働省から参りました関野でございます。本日はこのような貴重な機会を頂き誠に有難うございます。皆様からの質問にもお答えしていきたいと考えておりますのでよろしくお願い致します。本日頂いたテーマである食品衛生法の改正については資料を網羅的に用意させて頂きました。皆様もご存知のことも多いかとは思いますが今回の改正に関する情報を取り纏めさせて頂いておりますので、今後のご参考になれば幸いです。従いまして資料の全てをご説明するということではなく、その中からトピックス的に説明させて頂きます。併せて調製液状乳の省令改正の状況にも触れさせて頂きたいと思います。

国会での審議状況

 食品衛生法改正案の器具・容器包装の部分に触れさせて頂く前に本日(5月23日)現在の食品衛生法改正案の審議状況を少しお話しさせて頂きたいと思います。3月13日に閣議決定され、国会に提出されました食品衛生法等の一部を改正する法案は4月9日に参議院に付託されました。予算案などはご存知のように衆議院、参議院の順に審議されますが、我々の法案は国会の方でまず参議院での審議というご判断を頂きまして、4月12日参議院・厚生労働委員会で審議の上、全会一致で可決され、同13日には参議院本会議においても同様に可決されました。これから衆議院における審議に入っていくことになります。このあたりのことは他の法案審議との関係もありますが、担当者としては今国会で可決・成立できればさせて頂きたいと考えております。

 もうひとつ触れておかなくてはいかないのは参議院厚生委員会での附帯決議の内容です。器具・容器包装については「ポジティブリスト制度の導入に当たっては食品健康影響評価を踏まえた規格基準を計画的に策定する等、法の円滑な施行に万全を期すこと」と「合成樹脂以外の材質についてもリスクの程度や国際的な動向を踏まえポジティブリスト化について検討すること」が求められております。

今回の改正内容

 食品衛生法の器具・容器包装の関連条文としては第3章の器具及び容器包装がありますが、今回の改正の中心は第18条の〔器具又は容器包装の規格・基準の制定〕でありその全容を図示したものがこの図です。黒の小さい枠で囲まれているところに位置している方々が今回改正された食品衛生法の直接の対象となる方々です。一方川上の原材料メーカーの方々が原材料を食品容器用の用途として供給された場合は、今回の改正で導入されるポジティブリスト適用の対象となるわけですが、原材料メーカーが製造しているものは、食品容器用の用途だけとは限らずその場合は対象となりません。ここが黒の小さい枠内の事業者の方々と違う点で「求めに応じポジティブリスト適合性を確認できる情報を提供」することになるわけで、少し複雑なところかもしれません。具体的には原材料メーカーの方々と食品容器製造・販売事業者の方々が良好なB to Bの関係を維持しながら、如何にポジティブリスト適合を運用面で担保していくかということになります。そのために我々もきめ細かい作業を行い、場合によっては間に入って何らかの調整を行う必要があるかもしれません。同じように消費者に直接接している食品製造・販売事業者の方々は万一不適合が発生すると社会的影響が大きいことから、かなり慎重に構えて食品容器製造販売事業者に対して、情報等を求めることが想定されます。具体的に現状でどのような形の情報等が求められているかを、我々としても把握する必要があると考えており、皆様の協力をお願いしたいところです。いずれにしてもこの情報のリンクが途切れてしまうと、ポジティブリストの運用そのものに支障をきたすということになりますので、これらについては施行までにはきめ細かい対応が必要と考えております。

 今回の器具・容器包装の制度化の難しさを違う視点から少し触れておきたいと思います。 ポジティブリスト化はまず添加物を平成7年度の食品衛生法の改正時に行いました。平成17年度改正時は残留農薬を行っています。添加物が使用可能なものをポジティブリスト化するという「一次元」的なものであったに比較して、残留農薬はヒトへの影響度をベースに基準をつくり、これをあてはめるという二次元的なものでした。容器包装はこれらと比較として関係する事業者の範囲も多く、サプライチェーンも長く、そして原材料も多種多様です。多次元的だからこそ実現までに時間がかかったということが言えるのかも知れません。

食品衛生法改正案(器具容器包装部分)

 まず18条の第3項ですが「政令で定める材質」とは政府が閣議決定で定めるという意味で、具体的には当面合成樹脂ということになるかと思います。「許容される量が第1項の規格に定められていないものは使用してはならない」とは告示のような形式で列挙されたもの以外は使用してはならないということになります。ここで除かれているものがあって「その物質が化学的に変化して生成した物質は除く」とされています。言い換えれば合成樹脂や容器の原材料や添加剤といった「レシピ」に書かれているものはポジティブリストに当たりますが、科学的な反応によって生成されたものは含まれないということです。また、「当該物質が人の健康を損なうおそれのない量」を今後食品安全委員会と一緒に決めていきます。言い換えればその量を下回っていればポジティブリストとしての規制を受けないという一定の線引きになります。これらに関しては現在今迄の国内の自主基準として実績のある三衛協の方々にご協力を頂いて、そのデータを見させて頂いており、これによってポジティブリストに収載することの妥当な判断基準が見えてくると思われます。皆様も三衛協とは関係深いと思いますので、本件については団体間においてもコミュニケーションをとって頂ければと思います。このあたり告示までいきませんとなかなか分かりにくいと思われますが、基本はご説明差し上げたとおりです。

 第50条の3は衛生管理及び製造管理の規定ですが②に規定されているのはポジティブリストによって管理されている合成樹脂であり、①に規定されているのはそれ以外と考え頂いて構いません。③は地方自治体の条例による追加的な規定を可能にしているものです。

 50条の4の①は先程ご説明した容器包装販売・製造事業者の情報提供に関する義務規定です。これに対して②は原材料メーカーに対して先程ご説明したような理由から情報提供の努力義務規定を定めたものです。

 附則第1条では施行日について官報掲載等の「公布」から2年を超えない範囲とされており、施行日は諸般を勘案して政令で定められます。
附則2条は施行日までに販売または販売のように製造されと器具及び容器包装には基本的にはポジティブリスト制度は適用されないとしています。

導入についての関心事項

 この図は先程の付帯決議のご説明とも重複する部分もありますが参議院での審議において提起された事項です。主要なポイントについてご説明しておきます。
2は今回の改正内容で触れた点です。情報伝達のリンクがスムースにいくことが、制度導入の肝になると判断しておりますので私共としてはまずは現在の時点で川上/川下との関係において三衛協の自主基準が具体的にどう取り入られているのかを勉強させて頂き、その上で判断をさせて頂きたいと考えています。
5については消費者に対しても適合していることを伝えるということからマーク的なものも選択肢の一つとして検討していく観点で、皆様とも議論させて頂きたいと考えています。
6は使用条件に応じて適合性の判断ということから電子レンジというよりは例えば温度条件とか製品特性との関連で考えていきたいと思います。

制度導入に向けた「今後」

  1. 現在に至るまで三衛協を初めとして様々な関連団体の方々ときめ細かくお話しをさせて頂いてきました。ただ団体に所属されていない事業者の方々に対して今後どのように周知を図っていくかということの課題があると存じます。その意味で今後は食品事業者の方々にお伝えことによって、チェーンの上流の方々に働きかけるということにも更に力を入れて参りたいと考えております。

  2. 現在使用されているいわゆる「既存物質」の洗い出しについては三衛協の自主基準に加えて、輸入品や自主基準に積載されていない物質も含めてどう作業を進めていくかが今後の課題です。

  3. リスト化にあたって器具容器包装に関連する「材質」、「原材料」、「物質」の定義と範囲が事業者の方々からまだ分かりにくいとのご指摘もありますので、このあたりを言葉で表して明確にしていきます。

  4. 現存するデータ類の把握や安全性の評価については、付帯決議でも強調されております点でもあり取組が必要です。これは公布2年以内という時間の枠のなかでかなりのボリュームのものをこなしていくことになります。

  5. 施行後、制度の継続性をきちんと担保するためにその確認を行うための検出法や溶出試験などの試験法の整備を進めて参ります。

  6. 今後の作業量から考えて新規物質の収載手続きなどの事務をサポートいただくような「業務受託機関」の必要性を感じておりますが、具体的にどのような形で進めていくかは業界側のご意見もお聞きしながら進めて参りたいと思います。

  7. できるだけ早い時期に告示(案)を作成し関係する事業者 の方々にご覧頂いて議論ができるようにしたいと思っております。

最後に

 あまりよくこなれていない図で恐縮ですが、今迄お話しをさせて頂いたような適合性の確認の作業が関連する事業者の方々の間で円滑に進められるために、ご提案やご助言を頂きたいと思っておりますのでよろしくお願い申し上げます。

その他の資料

 ここから先のスライドはテキストとしてお使い頂ければと思います。簡単に中身に触れておくと平成28年8月から平成29年5月にかけて行われた「食品用器具及び容器包装の規制に関する検討会」の概要と取りまとめ、平成29年9月から11月にかけこれを受けて開催された「食品衛生法改正懇談会」の概要ととりまとめ、そして現在進められている「食品用器具及び容器包装の規制に関する技術検討会」の開催要項と論点、そして製造管理について既に通知としてお知らせしている「食品用器具及ぶ容器包装の製造時における安全確保に関する指針(ガイドライン)」です。ガイドラインについては制度開始後の告示のベースになると思いますが、それ迄に詳細な部分のつめは必要かと思っております。これらは厚生労働省のホームページなどで閲覧が可能です。

調製液状乳

 災害時の対応や男性の育児参加のための母乳代替の調製液状乳の必要性からの省令改正ですが、関連する部会での審議が終了し、また添加物部会における母乳代替食品として必要な添加物に関する審議そして食品安全委員会における食品健康影響評価も完了し、現在パブリックコメントが行われています。またWTOへの通報により6月の半ばまで意見を求めています。これらを踏まえて薬食審での審議が行われます。一部では夏にもという報道も行われていますが、今後の手順になにか大きな影響を与えるような状況変化がなければ、それ位のタイミングで省令化ができるのではないかと思っております。

ご清聴ありがとうございました。