顧問 青島 靖次

新年明けましておめでとうございます。
会員の皆様におかれましては良き新春を迎えられたことと存じます。心よりお慶び申し上げます。
さて、本年は昭和三十六年(1958年)十二月四日に当協会の前身社団法人日本牛乳キャップ協会が設立登記を完了してから満五十年を迎える記念すべき年であります。今回は改めて協会創立当時のことを振り返って見たいと思います。(なお五十周年記念行事は平成二十四年第五十一回通常総会に実施予定です)

それは、協会創設以前にさかのぼる。牛乳キャップはもともと輸入品が多く使われていたが、昭和三年、明治乳業両国工場で尚山堂製牛乳キャップの採用が決まった。これが日本で国産牛乳キャップが使用された第一号である。

昭和十六年十二月八日、日本は太平洋戦争に突入した。それまで牛乳瓶のふたの主流は王冠であったが、戦時経済下、金属配給統制で王冠の製造が困難になり、紙キャップが主流として使用されるようになった。あらゆる物資の統制も強化され、牛乳も配給制となり当然牛乳キャップの原材料も統制された。当時、尚山堂、弘野牛乳用品店、王冠コルク商会(現宝冠)、山下正光堂、清水製作所(現中国乳栓)等は牛乳キャップ同業会を作り、牛乳キャップ原材料の配給制への対応に努めた。その後昭和十九年同会を強化し、事務所を尚山堂に置き、牛乳キャップ同業会の活動は続いた。当時の業務は統制された原材料の割り当て、配分等がその主たるものであった。

昭和二十年に終戦を迎えた日本だが、戦後全国各地に牛乳プラントが復興し、牛乳キャップの需要は急速に増加してきた。その需要増加に伴い、牛乳キャップメーカーも全国に散在するようになった。牛乳業界では、昭和二十一年に東京飲用牛乳協会(後に全国牛乳協会の主軸となる)、同じく全国ミルクプラント協会が設立された。全国ミルクプラント協会は、翌年には全国飲用牛乳協会と改称され、後に現在の日本乳業協会へと発展して行く。

日本経済が高度成長を遂げた昭和三十年代、食文化の変化とともに、健康ブームも追い風となって、牛乳市場は宅配を中心に急速に成長した。この頃から牛乳キャップの衛生面、表示面を含めた規格化の機運が高まってきた。この機運の高まりのなかで昭和三十四年三月二十日、任意団体である日本牛乳キャップ協会が、会員二十一社、賛助会員二十七社をもって設立された。 牛

乳市場が発展を続ける中で、任意団体である日本牛乳キャップ協会をより公共性の高いものにするべく、社団法人化に向けた動きが活発になってきた。昭和三十六年には社団法人日本牛乳キャップ協会設立準備のため、定款、設立書類等の原案が理事会で審議、検討され、その年の四月十九日開催の定期総会で、任意団体日本キャップ協会を解散、社団法人日本牛乳キャップ協会発足の定款を承認、理事、監事の選任を経て初代理事長に浅野武矩氏が就任した。

以上設立までの経緯を述べてきたが、社団法人日本牛乳キャップ協会設立許可申請書を提出するまでの準備資料と当時の手続は以下のようであった。設立許可申請書の提出先は厚生大臣であるが、当時の法律では設立法人所在地の知事を経て提出することになっていた。したがって、申請書は当時の東龍太郎東京都知事を経て、古井喜実厚生大臣に提出された。 なお申請提出添付資料として、以下の書類を提出した。

一. 設立趣意書
二. 定款
三. 寄付書
四. 財産目録
五. 会員名簿
六. 事業計画書
七. 昭和三十六年度収支予算書
八. 役員名簿
九. 就任承諾書
十. 役員履歴書
十一. 設立総会議事録
十二. 事務所の使用契約書
十三. 従来の事業概要
この設立趣意書の原本は現在も協会事務所に保管されている。(*図1 設立趣意書)

さて、三の寄付書についてだが、当時は社団法人の資産は寄付行為をもって成り立つため申請時に寄付書によって募り、その総額が民法上の基本金(資本金)となるとされていた。当時の厚生省の指導もあり、協会は、社団法人日本牛乳キャップ協会の設立許可があったとき、会員二十一社、賛助会員二十七社から、一口五千円として、一口~十口の範囲で寄付を募った。尚山堂を始め理事、監事会員は十口と定め、会員、賛助会員に寄付を仰いだ結果、総額八十三万円寄付金が集まり、これを基本金とした。この基本金は設立許可後の登記簿には、資産の総額金八十三万円也と記載がされている。(事務局注:なお現在の社団法人<特例民法法人>には、現行の財団法人の基本財産に当たる基本金の定めは無く、このままでは内部留保の一部として扱われるとの厚生労働省の見解を踏まえ、昨年の第四十九回通常総会において「基本金規程」の新設を採択し、理事会の承認を条件に当該資産を公益目的事業に支出することも可能としている)

以上十三項目の添付書類を添えて、昭和三十六年六月十日、社団法人日本牛乳キャップ協会の設立許可申請書を東京都経由で提出して、同年十一月二十七日、厚生大臣より当時の民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により許可が下りた。(*図2 設立許可書)これにより、協会は直ちに東京法務局板橋出帳所へ法人登記を行い、登記を完了した。登記簿上の法人成立の年月日は昭和三十六年十二月四日であり、この日をもって公益法人である社団法人日本牛乳キャップ協会がスタートした。

図