顧問 青島 靖次

「温故知新」という言葉があります。平成23年12月に50周年を迎える当協会の将来像を検討する上で、当協会の過去の歴史を振り返ることは重要なことだと思います。今回は昨年に引き続き新年特別編第2弾を青島顧問にお願いしました。(事務局)

昭和五十三年四月二十二日、昭和五十三年度(第十七回)通常総会が開催され、任期満了に伴い役員全員が改選された。この改選で任意団体の時代から社団法人設立後を通じ二十年間の長きにわたって理事長を務めてきた浅野武矩氏(株式会社尚山堂会長)が病気療養のために退任し、代わって浅野勉氏(株式会社尚山堂社長)が新理事長に就任した。従来乳栓業者だけの団体だった当協会は、前年ワンウエイ容器製造業5社が新たに加入することによって、牛乳容器革命時代に即した歴史的発展を遂げたわけである。

この改選でワンウエイ容器側からも役員が加わり、協会は名実ともに牛乳容器を代表する団体となり、牛乳衛生向上への貢献ができる公益法人として新たな一歩をふみだした。

新役員は次の通り

理事長  浅 野  勉  (尚山堂)
理事   弘 野 長三郎 (弘野牛乳用品)
理事   稲 葉 幸 一 (三陽紙器)
理事   小 林 英 雄 (東洋キャップ製造)
理事   山 岸 七 郎 (酪農社)
理事   佐 藤 正 義 (十條製紙)
理事   八重樫 鉄 男 (日本テトラパック)
監事   高 橋 栄一郎 (扶桑紙器)
監事   吉 峰 清 継 (東洋産業)

また、後日開かれた理事会で副理事長に、稲葉幸一(三陽紙器)、佐藤正義(十條製紙)の両氏が選任された。  

浅野勉新理事長は就任挨拶で次のように述べられた。

イラスト
新理事長 浅野勉氏

「会社の規模も経営思想も異なるワンウエイ容器業界と乳栓業界とが、牛乳衛生を守るという一つの目的のために一体となり、新たな活動をはじめたところで、新理事長に推され責任の重さを通感しております。本年の事業計画にも示されている通り、牛乳容器包装についての規格基準制定の問題、飲用牛乳を始め、はっ酵乳などの『表示に関する公正競争規約」に示された表示の徹底を図る問題など幾多の課題を抱えています。

表示は、牛乳本体には出来ないので、容器に正しく表示せざるをえません。従って我々の会員各位の持つ責任は測りきれなく重いのです。これらを含めて、当面、会員相互の交流を密にして運営の円滑化を図るのが私の第一の役割と考え、そのうえで、課題の解決へがっちり取り組んで参りたいと思います。」

浅野新理事長はこのように所信を述べて、会員一同に更なる協会発展のため絶大なる協力をお願いした。

イラスト
前理事長 浅野武矩氏

尚、浅野武矩前理事長(株式会社尚山堂会長)は、これに先立つ昭和四十二年十一月二十日に開催された社団法人全国牛乳協会の表彰式で、永年の牛乳容器包装に関する功績に対して、「厚生大臣表彰」を受けている。これは当時の牛乳容器包装業界としては、異例な受賞であった。

受賞理由は、

一. 牛乳キャップ考案者及び創業者として。大正時代の後半、当時牛乳は高温殺菌が中心で、牛乳瓶用栓はコルク栓や王冠栓であったが、何れもコストが高かった。内務省令の改正により低温殺菌も可能となり、牛乳栓も安価な紙栓(牛乳キャップ)を使用できるようになったが、当時は牛乳キャップを外国から輸入していた日本乳業界の状況を見て、牛乳キャップを国内で初めて試作し、東京にて製造販売を開始した。昭和五年には牛乳キャップを全国の牛乳処理場に販売を開始して、その後輸入品を全く駆逐してしまった。以来今日まで牛乳業界発展のため、牛乳キャップ製造一筋に努力された。

二. 牛乳の普及に伴い、牛乳衛生の徹底を期する為に、当時牛乳瓶口の冠帽の不衛生な点を憂い、昭和三十一年から牛乳瓶口冠帽機の研究をはじめ、昭和三十三年には今日のポリエチレンによる牛乳瓶口冠帽機を発明し、牛乳業界に貢献した。

三. 戦中、戦後の混乱期に於ける物資不足の際、乳業界再開と牛乳普及に関して、乳業界諸功労者と共に牛乳キャップ及び新製品の開発を通じて努力した。 当時、牛乳は次世代を担う子供や、病床で牛乳を求める患者にとって不可欠のものであるという信念は如何なる混乱期にも揺るがなかった。

四.昭和三十三年戦後の牛乳普及に伴い全国に散在していた牛乳キャップ業者の統一を計り、日本牛乳キャップ協会を設立、同三十六年に同協会を社団法人日本牛乳キャップ協会と改組し、牛乳キャップ製造に関して衛生的処理並びに規格統一を図った。指導官庁のもと外部団体の指導者として、その豊かな経験と知識をもって常に適切な指導に努め、今日の牛乳キャップ並びに容器包装の衛生的処理の普及に努め、乳業界の発展につくした、というものだった。初代浅野武矩理事長は、このような業績とともに、当協会の創設者として各位から親しまれていた。