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会員向けセミナー抄録
 『食品の安全確保と食品安全委員会の仕事』

平成26年度の会員向けセミナーは去る2月12日「食品の安全確保と食品安全委員会の仕事」のテーマで内閣府食品安全委員会事務局山本実評価第二課長をお迎えして、乳業会館BC会議室で実施されました。本稿は山本課長のご許可を頂いて行った録音から事務局が書き起こし、当日の講演をとりまとめたもので文責は事務局にあることを最初にお断りしておきます。(TF)

山本実評価第二課長

先程ご紹介頂きました山本でございます。今日は皆様と直接お話するチャンスが少ないなか、こういった機会を頂きありがとうございます。本日は食品安全委員会の活動をご紹介するパンフレットや季刊紙である「食品安全」も持参させて頂きました。お持ち帰り頂きまして当委員会の活動にご理解を深めて頂ければ幸いです。

はじめに

まず食の安全の確保とは、一義的に「食品の確保」があり、次に「その食品の安全性の確保」から構成されていることをまず確認させていただきたいと思います。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

また食品が安全であるということは「予期された方法や意図された方法」でその食品が食べた人に「害を与えない」という保証であるという下図のようなコーデックスの定義があります。いわゆる「こんにゃくゼリー」の件では、窒息事故が上記に規定された方法で食べられたのかという点が論点になったことはご記憶にあるかと思いますし、また食品安全委員会においてもその窒息事故のリスクは餅による窒息事故のリスク以下であるという見解を発表しておりました。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事 自然界には植物に代表される独立される独立栄養生物とヒトを含むこれらを食べる従属栄養生物があります。この独立栄養生物と従属栄養生物の関係を図のようにプロセスとして見てみると、よく言われる食品安全の確保が「農場から食卓まで」であることがご理解頂けると思います。観点を変えると食に関しては、生命、生存の維持ためには安定的、経済的でかつ安全な食料供給の維持継続が求められており、そのためには伝統的な知恵から各種科学技術までのあらゆる手段を使用する必要がありますが、これらの安全性は常に確認が必要であるということになります。

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またよく使われる食品の「安全」と「安心」という言葉について言えば「安全」は科学的評価によって決定された客観的なものあるのに対して「安心」は消費者の心理的判断による主観的なものであり、その意味では後でお話するリスクコミュニケーションに客観的な出口はないということになるわけです。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

食品の安全確保のあり方

コーデックス(国際食品規格委員会)の国際的な合意等を参考としつつ、我が国においてもBSE問題の検証を踏まえて食品安全衛生行政のあり方が再検討され、2003年7月に食品安全基本法が制定され食品安全委員会が設置されました。これによりリスク分析の概念、すなわちリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの役割が明確に規定されました。


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食品安全委員会の行うリスク評価は、ハザードの同定や後程ご説明するADI(Acceptable Daily Intake一日許容摂取量)、TDI(Tolerable Daily Intake耐用一日摂取量)等の設定を科学的かつ中立公正に行うのに対して、厚生労働省、農林水産省、消費者庁等が行うリスク管理はリスク評価に基づき費用対効果や技術的可能性等も勘案して政策的に行われるもので、「規制」である規格や輸入基準の設定等や改善を通じた安全確保がこれに当ります。 一方リスクコミュニケーションは行政、消費者、事業者などステークホルダー(利害関係者)全員が相互に理解を深め意見交換を行うものですが合意構成を行うものではありません。従って合意構成が出来なかったリスクコミュニケーションは失敗であるというコメントは正しくありません。


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食品安全委員会

食品安全委員会、親委員会という言い方を内部的にはしておりますが7人の委員から構成され毎週火曜日の14:00から開催されています。リスク評価が多岐にわたるため、生物系、化学物質系,新食品等の12の専門調査会があり延べ218名の専門委員がおります。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

これに私が所属している事務運営等を担当する事務局が100名(職員60名、技術参与40名)の構成となっています。世界各国の評価機関であるEUのEFSAや米国のFDAとは連携し相互訪問も行っています。またWTO.・SPS協定において科学的なリスク評価に基き、健康な保護のために必要である以上に貿易制限的でないということが規定されていますので、例えば日本が国際基準より厳しい基準を適用する場合は科学的な正当性やリスク評価が求められることになります。これは日本が食品を輸出する場合は逆に輸出対象国に対して求めることになります。

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リスク分析(アナリシス)と評価

リスク分析(アナリシス)をご説明する時にはまず「ハザード」と「リスク」についてご理解頂かなくてはなりません。ハザードは危害要因と訳されていますが、端的なご説明をすると「健康に悪さをするもの」であり、例えばO-157やアクリルアミドがこれにあたります。リスクとはハザードが存在する結果として生ずる健康の悪影響の程度と起こる確率との関数(端的に言えば掛け算)になります。例えば冬季にはノロウィルスによる食中毒があります。症状として重篤なものはあまりありませんがその確率は比較的高いものであることと比べて、例えばO-157による食中毒の発生が特に幼児や高齢者に重篤な結果をもたらしたことはご記憶にあると思います。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

いいかえればリスクは特定のハザードの毒性の程度その摂取量によって決定されます。リスク分析(アナリシス)の考え方の図をご覧頂くと「リスクゼロ」は理論的にあり得ず、食品の安全は量の問題であることがご理解頂けると思います。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事 先程ふれたADIについて触れておきますと、ADIは農薬や食品添加物などが対象の「ヒトが一生涯、毎日摂取しても有害作用を示さない量」であり、動物実験の結果から推定されたNOAEL(No Observed Adverse Effect Level 無毒性量)にさらにSF(Safety Factor 安全係数、図の場合は100)を乗じたものです。リスク管理の一環として厚生労働省や農林水産省が設定する使用基準や残留基準はこれを更に下回って設定されます。従って使用基準や残留基準を超えたからいって即回収することは一概に正しい対応とは言えないわけです。農薬のリスク分析(アナリシス)の実例を図に示しますのでご参照下さい。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事 食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

リスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションについても触れさせて頂きます。食品安全におけるコミュニケーションとは食品安全委員会を含む関連する行政機関、消費者、生産者、製造・加工業者、流通・小売業者、科学者等の間でリスクに関する情報を共有し、意見交換を行って政策に反映させるものという定義になります。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

具体的には食品安全委員会においては、委員会・調査会は原則とし議事録をホームページに掲載し、各種の団体等との意見交換会や勉強会や印刷及び電子の媒体等を活用した情報提供をおこなっております。

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事

食品の安全確保と食品安全委員会の仕事 特に食品安全委員会の委員が講師となって開催している「食品を科学する」‐連続講座は食品関係の企業や消費者団体の方々にご好評を頂いていますし、また大きな影響力をもっている報道関係者や消費者団体には科学的な知見をご理解頂くために定期的な意見交換を実施しています。

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電子媒体についてホームページやオープンアクセスの英文電子ジャーナルに加えて2014年にFacebookを開始しました。また印刷媒体としては季刊誌「食の安全」を発行しております。しかしながら広義のリスクアナリシスの3要素のなかで非常に重要であり、かつ難しいリスクコミュニケーションについては平成26年度に有識者の方を交えて「リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会」開催し、そのあり方について討議しており、現在そのとりまとめが進んでおります。

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山 本 実
内閣府食品安全委員会事務局 評価第二課長、獣医師

昭和60(1985)年、農林水産省へ入省。
 農林水産省では、主に動物衛生、動物用医薬品に関する行政に従事。
 食品安全委員会事務局では、主に生物系ハザードを対象としたリスク評価に従事。
平成19年7月〜、動物衛生課 国内防疫調整官
平成21年7月〜、動物衛生課 国際衛生対策室長
平成25年4月〜、食品安全委員会事務局 勧告広報課長
平成25年5月〜、食品安全委員会事務局 評価第二課長
(平成27年4月〜、農林水産省 動物医薬品検査所長)

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