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第2回社員総会記念講演
―BSE対策の見直しと食中毒の発生状況

厚生労働省監 視安全課鶴見課長補佐

5月22日、当協会第2回社員総会の記念講演会が、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課鶴身課長補佐を迎え、総会に続きKKRホテル丹頂の間にて開催されました。当初は同課滝本課長にご講演を戴く予定でありましたが、国会等公務ご多忙の為、鶴身課長補佐にご講演いただきました。
最近の食品安全行政の動向として「BSE対策の見直し」「食品中の放射性物質」及び「食中毒の発生状況について(ノロウィルスと腸管出血性大腸菌食中毒)」の標題でご講演を戴き、本号では「BSE対策の見直し」と「食中毒の発生状況について」を紹介させて戴きます。なお当稿は鶴身課長補佐のご許可を頂いた当日の録音から事務局高橋が抄録として書き起こしたもので、文責は事務局にあることを最初にお断りしておきたいと思います。(事務局橋)

BSE対策の見直し

本日は滝本課長からの講演予定でありましたが、国会等の都合があり私の方からお話をさせて戴きます。BSEと放射能についてと、私の現在担当している食品衛生分野の話もさせていただければと思います。

■BSEとは

平成13年 国内で最初のBSE発症例が見つかり10年が経過し、最新の科学的知見に基づき見直しを行うという事で食品安全委員会での評価を経て、見直しを進めている状況です。
復習となりますが、原因病原体としては異常プリオンタンパク質で、通常もっているプリオンタンパク質が異常化したものが原因とされております。伝達は異常プリオンタンパク質が接触して通常のプリオンタンパク質が異常化して行くことによると言われています。感受性のある動物としては牛、水牛などで、一番の特徴は潜伏期間が長いという事です。異常プリオンタンパク質を摂取しても行動の異常、運動の失調になる等には3年から7年掛かかります。実際の診断には、その異常プリオンタンパク質を検出することしかありません。感染ルートとしては、食肉処理の際の残渣からレンダリングされて得られる肉骨粉を飼料として牛に給与することが原因と言われております。一部では代替乳(牛に与える乳)も原因ではないかと言われています。人への感染としては vCJD(変異型クロイツフェルトヤコブ病)の原因ではないかと言われています。平成23年1月まで222人、そのうち英国では174人が発症しております。

そのBSEの原因となる異常プリオンが蓄積しやすい部位、牛の特定危険部位(SRM)としては 三叉神経節を含む脳、背根神経節を含むせき柱、脊髄、回腸遠位部となります。感染は、異常プリオンを牛が食べて腸から吸収され、神経経路である脊髄を通って、脳に届き脳がスポンジ状になると言われており、神経が沢山集まっているところは溜まり易い部位になります。

■国内BSE対策の概要 

現状国内の対策ですが、生産段階からと畜、販売に至る各段階における規制により、食肉の安全性を確保する体制になっています。ひとつは肉骨粉を飼料として与える事の禁止、ここでは他の動物へのクロスコンタミネーション防止措置も図られています。生産段階で死亡した牛は農林水産省で死亡牛の検査、そして食肉に廻る場合にはと畜場での特定部位の除去をし、合わせてBSEの検査を行い、その上で食肉として販売される事になっております。BSEについては餌が原因である事から、問題となる餌を与えない、万が一、蓄積をしていてもその蓄積されやすい部位を除去するという2重・3重の安全性が確保されている状況になっています。

次に検査をした頭数とBSEの確認された頭数を表したものです。発症したものは21〜40か月齢で2頭で、潜伏期間が長いという事で高月齢にならないと見つからないというところが読み取れます。特に21か月齢と23か月齢で見つかった2頭については変異型BSEと言われますが、食品安全委員会の評価で、この変異型BSEには感染実験で感染性が認められなかったとされております。

餌の規制が徹底された平成15年以降に出生した牛からはBSEの発生が認められていないというグラフです。
次に世界での状況を見たものです。一番多かったヨーロッパ全体で見ても現在は20頭未満。一番多かったその中でイギリスでも3頭の発生と、餌の規制の徹底により、その発生が押さえられて来ています。

   

■牛海綿状脳症対策の再評価に付いて 

国内外での餌の規制と対策の結果、リスクが大きく下がっているのではないかとして、最新の科学的知見に基づき、国内検査体制、輸入条件といった対策全般の再評価を行うこととし、平成23年12月19日、食品安全委員会に諮問したものです。

次に諮問の内容ですが、1つは国内の措置として@検査対象月齢を、現行の「20か月齢」から「30か月齢」とした場合、ASRMの範囲を、現行の「全月齢」から「30か月齢超」に変更した場合の人の健康にどのような影響があるかのリスク評価の依頼。2つめは国境措置(米国、カナダ、フランス、オランダ、アイルランド及びポーランド)として@月齢制限を現行の規制閾値である「20か月齢」から「30か月齢」とした場合 、ASRMの範囲である頭部(扁桃を除く)、せき髄及びせき柱について、現行の「全月齢」から「30か月齢超」に変更した場合のリスク評価の依頼。更に3つ目として上記@及びAを終えた後、国際的な基準を踏まえ、上記@、Aの月齢の規制閾値を引き上げた場合のリスク評価の依頼をした経緯になります。

   
昨年の10月22日 上記2つの答申(1次答申)があり、現行の検査対象を「20か月齢」から「30か月齢」とした場合、リスクの差は、あったとしても非常に小さく、人への健康影響は無視できるとしました。
SRMの範囲も「全月齢」の場合と「30か月齢超」の場合のリスクの差はあったとしても非常に小さく、人への健康影響は無視できるとの答申となりました。輸入に付いても同じで、リスクの差はあったとしても非常に小さく、人への健康影響は無視できるとなっております。

それから本年4月8日に戴いた答申(2次答申)ですが、3つ目の評価として@評価対象国における発生確認最低月齢、AEUにおけるBSE発生の実績月齢、BBSE感染牛脳組織の経口投与実験での異常プリオンたん白質検出される月齢−これは経口投与しても高齢にならないと発症しないとの内容です。C当然の事ながらBSEプリオンの摂取量が少ないほど潜伏期間が長くなる。と、いう知見から、国内措置としてと畜場における検査対象月齢を48か月齢(4歳)超に引き上げたとしても、人への健康影響は無視できる。との結論を戴いております。

前記に加え、OIE(国際獣疫事務局)の評価ですが、各国の状況評価をしています。OIEとして無視できるリスクの国としての主な評価条件として、@過去11年以内に自国内で生まれた牛でBSEの発生がないこと。がありますが、日本のBSE感染牛のうち、最後に生まれた牛は、平成14年1月13日生まれであり、平成25年1月14日に11年が経過している。A有効な飼料規制が2年以上実施されていること。これらについて日本はクリアしていますと言う事で、平成25年5月下旬のOIE総会において「無視できるリスク」の国に承認される見込みとなっております。

■国内措置の見直し
 
その様な状況を踏まえこれまで取ってきた対応ですが、最初の諮問の答申を受けて昨年10月、BSE検査の対象月齢を20か月齢超から30か月齢へ、2次答申を受けてBSE検査の対象月齢を30か月齢超から48か月齢へ引き上げるというものです。また、SRMの除去の対象に付きましては30か月齢超が対象となっております。

■全頭検査の見直し

省令上の検査対象の月齢を上げても、検査は自治体判断で実施されており、4月以前から対象は21か月齢以上で有りましたが、実際には現在も全頭検査が行われております。今回検査対象を48か月齢にしますが、更に税金で検査を続けると言う事は、1つは検査をしていない牛は危ないのではないかとの誤ったメッセージと成るのではないか、又一部で検査をしており、一方で検査をしていないところがあると、消費者に混乱を招くのではないかと言う事が懸念されます。
その様な混乱を防ぐ為、2次答申を受けたところで全自治体が一斉に見直す事が一番望ましいのではないかという事で、平成25年4月19日、BSE全頭検査一斉見直し(48か月齢以下の全頭検査を止める)を依頼する通知を、農林水産省と連携して地方自治体に出しております。しかしこれは国が通知を出したといっても自治体の判断に成りますので農水省の生産部局との連携も大事に成ってきます。

もうひとつ理由がありまして、30か月齢で切ると特に和牛の出荷月齢はグラフの様であり、検査されたものとされないものが混在する事となり、分別管理も難しい状況もあります。ここで48か月で区切ると国内の牛の大部分は検査無しで良い事となります。これで検査をする自治体の混乱も防げるものと考えております。この48か月齢以下ではBSE検査は実施不要であると、7月からを目途として関連各所へ説明をしているところです。

■SRMの除去 

この特定危険部位の除去対象は30か月齢のまま変わりません。

■スケジュール

4月1日に30か月齢、7月1日を目途として48か月齢に変えるという事で準備を進めておりますが、4月25日より各地でのリスクコミュニケーションを進めております。
5月21日東京三田共用会議所でリスクコミュニケーションを行い、24日は神戸、そのほか各自治体主催の意見交換会にも我々も参加し、6月前半くらいまで続けて行きます。
6月上旬には 関係省令の改正(検査対象48か月齢)、補助金交付要綱の改正を行い、7月1日に関係省令の施行、補助金交付要綱の施行を行うスケジュールで進めて行く予定です。

■まとめ

このBSE問題は当初には混乱もありましたが、基本的には原因を考えると生産段階で飼料の管理が一番重要で、その管理がなされて来て、又と畜場でSRMが除去されるという事が長年実践されてきていて、現状の管理が適切に行われて行く限り発症する牛は見つからないだろうという事となります。
改めて強調しておきたい点として、生産段階での管理が大変重要で、そしてフードチェン全ての段階で各々の必要な措置を取る事が重要ということであり、本BSE問題はひとつの例ではないかと思います。

食中毒の発生状況とノロウィルス及び腸管出血性大腸菌食中毒について

私は食品安全係でありまして、そちらのほうの説明もさせて戴きます。
食中毒事件は、長くみれば事件の数も減少して、患者数も最近ではあまりかわらない状況です。
   
残念ながら昨年と一昨年は11名の方が亡くなられております。大きな事件として、一昨年は富山での焼肉店のユッケによるもの、昨年は札幌の白菜の浅漬けです。どちらも腸管出血性大腸菌が原因です。

食中毒原因の件数からみるとカンピロバクターとノロウィルスが一位、二位を争っておりますが、どちらも死者が出る状況ではありません。昨年末ノロウィルスが流行しまして亡くなられた方は社会福祉施設等で、嘔吐に伴う誤嚥性の肺炎・喉の詰まり等で亡くなっており食中毒で亡くなった訳ではありません。

患者数では圧倒的にノロウィルスが多いのは1件当たりの患者数が多いからです。社会福祉施設、給食施設等であり1件で多くの患者が発生しています。

昨年末は広島の弁当業者で近年珍しい位の1件で2千人以上の患者が発生する事例がありました。12年の乳飲料事故以来の1件当たりが多い食中毒でした。ノロウィルスの流行は18年に1回ありまして、昨年は2度目でした。500名以上の患者数が出たのは広島と山梨でいずれもお弁当屋で、安い価格で配達するようなものです。一日何万食も作って、夜中に製造して朝に配達するようです。
食中毒で亡くなられた方はO157等による腸管出血性大腸菌によるものと、あとは野草によるものです。きのこ狩りや春の七草等山菜採りの折に有毒なものと間違って食中毒に至るものが多いです。
ノロウィルスは感染性が強くて、インフルエンザと違ってアルコールが効かなくて、変異が早く、人体の中でしか増殖しないものです。

感染経路で重要なのは調理者です。調理従事者が感染して、直接食品に触って感染を広げてしまう。従って従事者の健康管理、これは一般衛生管理の一つですがやはり大切です。

実は18年のノロウィルスと昨年流行したものではタイプが異なっています。同じGU4のタイプですが、違うクラスター(塊)で、これは日本だけでなく世界中で流行して苦戦しています。人の移動が世界中で流行する要因と考えられます。

多数の患者を出した食中毒では、従業員の衛生管理が充分でなかった事によります。重要なのは健康管理と手洗いです。手洗いはそのタイミングも重要で、手袋しているから良いという訳ではありません、守るのは自分の手荒れではなく食品です。また実は親指の周りも汚染しやすいです。便を拭いた時に親指の周りに付着するので指先と同様に親指の付け根も良く洗う必要があります。


   
外国では野菜による食中毒も起きており、札幌の事例では野菜と特定はしていないものの、清掃工程で不備な所がありました。直接の汚染源は判らないものの工程管理に問題がありました、やはり一般衛生管理が重要です。最近では有機農業が流行していますが、肥料等が衛生上問題ないかを生産段階での管理でお願いしたいところです。
肉も食中毒があります。特に豚の生レバーは危ないです。食べないでください。

最近の丸総(総合衛生管理製造過程)、HACCPの承認をしていますが、承認を辞退した例が2つあります。
ひとつは言語道断の問題で、温度計の表示を変え、データまで改竄しておりコンプラインスに大きく抵触するケースがありました。もうひとつは牛乳から大腸菌が見つかったケースです。
これは機器のメンテナンスが充分でなく、規定のプラン通りに行っていなかったようです。それが直接の原因かはともかく結果としてマニホールドの所から菌を吸い込んで大腸菌が検出したケースがありました。
いずれにせよHACCPのような工程管理と同様に一般的な衛生管理が重要であります。異常を速やかに上司に報告する等、規定をキチンと守る体制が重要です。会社としてコンプラインスが疑われるケースが未だ多く、それが事故へ繋がる感じがします。

HACCP支援法を農水省と共管ですが、期限の延長等が国会の審議をして戴いています。食中毒の発生の防止、政府として輸出促進を目指しており、米国での食品安全強化法の採択もあり、国際的にもHACCPの推進強化が望まれています。自治体HACCPも民間HACCPも含め国内的に進める状況となっています。
丸総(総合衛生管理製造過程)の評価検討会が行われて、例外承認(規定外の方法での管理の承認)も2例目となりました。
丸総(総合衛生管理製造過程)の承認制度開始から15年以上が経過していることを踏まえて、ますますHACCPの推進が重要な状況となっています。
HACCPのベースとなるのは一般衛生管理であって機器の管理も重要な要素であります。一般衛生管理の上にHACCPが成り立っており、土台となっています。
食品安全を巡る問題は色々ありますが、その場その場で自己の責務を適正に果たしている事が、全体としての食品安全向上に繋がっていくと思われます、 是非これからの皆様方のご活躍とご協力をお願いしたいと思っておりますので。宜しくお願い致します。

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